●更新日:2023/09/02
・相手の琴線に触れないように気を付けましょう。
相手の怒りを買わないようにする という意味で
使う人が多い表現ですが、
実は、間違いなのです。
今回は「琴線に触れる」について、
見ていきましょう。
ひとことで表すと
(正) 心の奥に秘めた感動・共鳴する心情
(誤) 相手の怒りを買ってしまうこと
詳しい解説
琴線 の意味
琴線
読み方:きんせん
意味:
・琴(こと)の糸
・心の奥に秘められた、感動し共鳴する心情
もともと、琴は糸を弾くと、
心に届いて人を感動させるような、美しい音色を奏でます。
そこから、
心の奥深くにある、物事に感動しやすい心情の例えを
表すようになりました。
琴線に触れる の正しい意味
「琴線に触れる」とは、
心の奥に秘められた感動・共鳴する心情という意味です。
(例)
・心の琴線に触れる話
・彼の話は、みんなの心の琴線に触れた
琴線 の意味から考えると、
「怒りの琴線に触れる」という使い方は、誤用だとわかります。
怒らせる という意味合いで使うのは誤りなのです。
しかし、
誤った意味で広まっているという現状があります。
文化庁の調査によると、
(正) 感動・共鳴する心情
(誤) 怒りを買ってしまうこと
ほとんど同じぐらいの割合で、解釈しているという結果に。
逆鱗に触れる との混同
同じ“触れる”を使う表現に、
「逆鱗に触れる」があります。
逆鱗
読み方:げきりん
意味:天子(天皇・帝王)の怒り・目上の人の怒り
竜のアゴの下には、逆さに生えたウロコがあり、
人がそれに触れると、必ず殺される
という中国の故事から生まれたことわざ。
つまり、「逆鱗に触れる」は、
目上の人を激しく怒らせる という意味です。
目下の人を怒らせた場合、
あるいは、自分の怒りに対して使うのは誤りです。
◯ 社長の逆鱗に触れて、彼は降格した
× 課長の言動が、部下の逆鱗に触れた
× 彼の言動が、私の逆鱗に触れた
このように、
「琴線に触れる」と「逆鱗に触れる」は、
語源や意味も全然違います。
"触れる" という同じ言葉があるために、
混同して使われるようになってしまった と考えられています。
まとめ
今回は「琴線に触れる」について、見てきました。
誤った、怒らせてしまう の意味ではなく、
感動する心情 という本来の美しい意味で使いたいですね。
参考文献
・広辞苑第6版
・明鏡国語辞典
・できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方
・明鏡 ことわざ成句使い方辞典
・文化庁 連載「言葉のQ&A」-「琴線に触れる」の意味