ビジネスの場では、できないことを伝えたくても、
後ろめたさや言いにくい気持ちがあるものです。
「致しかねます」は、できないと伝える表現の一つです。
日常で使うことはあまりないので、
最初は馴染みがなく、使いにくいですよね。
今回は「致しかねます」について、
見ていきましょう。
ひとことで表すと
意味:することができません
敬意:致しかねます > できかねます
・致しかねます・・することができない
・いたしかねます・・〜をすることができない(他の動詞を補助)
詳しい解説
ビジネスの場においては、
できる限り、相手を不快な気持ちにさせたくないですよね。
「致しかねます」は、
できないことを遠回しに伝える表現です。
否定を肯定的な表現にすることが、大きなポイント。
兼ねる の意味
兼ねる (かねる)の意味
(1)二つ以上の機能や性質をもつ
(2)他の動詞に付いて、躊躇・不可能・困難などの意味を表す
a:〜することができない、〜することが難しい
b:(打ち消しを伴って)〜しないとは言い切れない
(例) どんなことでもやりかねない
(2)では、平仮名で書くことが多いです。
今回の意味は、
(2) a:〜することができない、〜することが難しい です。
意外と勘違いしている人がいますが、
「かねる」自体は、敬語ではありません。
「できかねます」は、できかねる を丁寧にした表現。
できかねる = できる + かねる
そのため、敬意の度合いは、高くありません。
致す の意味
致す (いたす) の意味
・動詞「する」の謙譲語
また、自分の動作に対して、
へりくだった気持ちで丁寧さを添えながら敬意を表すときにも使います。
(例)
・良い香りが致します
・それは私が致します
「致しかねます」は、致しかねる を丁寧にした表現。
致しかねる = 致す + かねる
することができない という意味ですね。
致します と いたします の違い
漢字と平仮名では、意味合いが異なります。
- 致しかねます
漢字の「致しかねます」は、
“することができません”と伝えるときの表現です。
つまり、動詞「致す」として使います。
(例) 弊社では致しかねます
意味:本社ではすることはできません
- いたしかねます
平仮名の「いたします」は、
別の動詞の後ろに付いて、補助動詞のはたらきをします。
(例) ご対応いたしかねます
意味:対応をすることができません
致します と できかねます の違い
何らかの事情があってできない
***
・できかねます
事情の有無にかかわらず、物理的にできない
できかねます の方が、致しかねます よりも、
断定的で、はっきりと否定するというニュアンスがあります。
前述の通り、致す は謙譲表現のため、
ビジネスでは、致しかねます の方が丁寧です。
とはいえ、はっきりとできないことを伝える場合は、
「できかねます」にするなど、TPOで使い分けることも重要です。
まとめ
今回は「致しかねます」について、見てきました。
断定的ではなく、
やんわりと否定する表現に慣れていきましょう。
参考文献
・広辞苑第6版
・明鏡国語辞典