よく見る間違い「琴線に触れる」 怒らせる 意味はNG

 

●更新日:2023/09/02

・相手の琴線に触れないように気を付けましょう。

相手の怒りを買わないようにする という意味で
使う人が多い表現ですが、

実は、間違いなのです。

今回は「琴線に触れる」について、
見ていきましょう。

***

ひとことで表すと

琴線に触れる」の意味
(正) 心の奥に秘めた感動・共鳴する心情
(誤) 相手の怒りを買ってしまうこと

詳しい解説

琴線 の意味

琴線
読み方:きんせん
意味:
・琴(こと)の糸
・心の奥に秘められた、感動し共鳴する心情

***

もともと、琴は糸を弾くと、
心に届いて人を感動させるような、美しい音色を奏でます。

そこから、
心の奥深くにある、物事に感動しやすい心情の例え
表すようになりました。

 

琴線に触れる の正しい意味

琴線に触れる」とは、
心の奥に秘められた感動・共鳴する心情という意味です。

(例)
・心の琴線に触れる話
・彼の話は、みんなの心の琴線に触れた

 

琴線 の意味から考えると、
「怒りの琴線に触れる」という使い方は、誤用だとわかります。

怒らせる という意味合いで使うのは誤りなのです。

しかし、
誤った意味で広まっているという現状があります。

 

文化庁の調査によると、
(正) 感動・共鳴する心情
(誤) 怒りを買ってしまうこと

ほとんど同じぐらいの割合で、解釈しているという結果に。

***

逆鱗に触れる との混同

同じ“触れる”を使う表現に、
逆鱗に触れる」があります。

逆鱗
読み方:げきりん
意味:天子(天皇・帝王)の怒り・目上の人の怒り

竜のアゴの下には、逆さに生えたウロコがあり、
人がそれに触れると、必ず殺される
という中国の故事から生まれたことわざ。

 

つまり、「逆鱗に触れる」は、
目上の人を激しく怒らせる という意味です。


目下の人を怒らせた場合、

あるいは、自分の怒りに対して使うのは誤りです。

◯ 社長の逆鱗に触れて、彼は降格した
× 課長の言動が、部下の逆鱗に触れた
× 彼の言動が、私の逆鱗に触れた

 

このように、
「琴線に触れる」と「逆鱗に触れる」は、
語源や意味も全然違います。

"触れる" という同じ言葉があるために、
混同して使われるようになってしまった と考えられています。

***

まとめ

今回は「琴線に触れる」について、見てきました。

誤った、怒らせてしまう の意味ではなく、
感動する心情 という本来の美しい意味で使いたいですね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

参考文献
・広辞苑第6版
・明鏡国語辞典
・できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方
・明鏡 ことわざ成句使い方辞典
・文化庁 連載「言葉のQ&A」-「琴線に触れる」の意味

 

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