「さ入れ言葉」を聞いたことありますか?
最近増えてきている誤用表現です。
今回は、「さ入れ言葉」について、学んでいきましょう。
ひとことで表すと
“〜せる”が正しい形だが、さ を入れて “〜させる” にしたもの
<状況>
・“〜せていただく” で使うことも多い
・見分け方:“さ”を抜いて違和感がなければ、さ入れ言葉と判断可能
詳しい解説
それでは、確認していきましょう。
「さ入れ言葉」とは
“〜せる”が正しい形にもかかわらず、さ を入れて “〜させる”にしたものです。
謙譲語 “いただく”とセットにして、
“〜せていただく”で使うことも多いですね。
まずは、さ入れが正しいものを見ていきましょう。
日本語の文法の話です。
五段活用は間違えやすい!
- 五段活用
“〜ない”の形にしたとき、
“ない”の直前の語の母音が、“ア”になる動詞
文章で書くと難しく見えるので、表にしてみました。
わかりやすく、“せていただく”にしています。
通常の五段活用は、さ が入らず、”〜せていただく" です。
動詞 | 〜ない | 〜せていただく |
行く | 行かない | 行かせていただく |
歌う | 歌わない | 歌わせていただく |
ちなみに、間違いやすいのですが、
さ行の五段活用は、“せる”ではなく、“させる”が正しいです。
動詞 | 〜ない | 〜せていただく |
試す | 試さない | 試させていただく |
話す | 話さない | 話させていただく |
上一段活用は、さ入れが正しい
- 上一段活用
“〜ない”の形にしたとき、
“ない”の直前の語の母音が、“イ”になる動詞
動詞 | 〜ない | 〜せていただく |
着る | 着ない | 着させていただく |
下一段活用は、さ入れが正しい
- 下一段活用
“〜ない”の形にしたとき、
“ない”の直前の語の母音が、“エ”になる動詞
動詞 | 〜ない | 〜せていただく |
食べる | 食べない | 食べさせていただく |
決める | 決めない | 決めさせていただく |
来る は、さ入れが正しい
- カ行変格活用・・“来る” のみ
動詞 | 〜せていただく |
来る | 来させていただく |
例文・類語
前述した形以外の動詞は、“〜せる”が正しい表現ですが、
誤って、“さ”を入れてしまったものが、「さ入れ言葉」なのです。
誤用の例を見てみましょう。
正しい表現 | さ入れ言葉 (誤用) |
送らせていただく | 送らさせていただく |
帰らせていただく | 帰らさせていただく |
使わせていただく | 使わさせていただく |
休ませていただく | 休まさせていただく |
さ行の五段活用と、ごちゃ混ぜになって、
丁寧さを意識するあまり、“さ”を入れてしまうことが起こります。
誤用かどうか見分けるポイントは、
一度 “さ”を抜いて、違和感がないかを確認することです。
<さ入れ言葉>
書かさせていただく → 書かせていただく
<さ入れ言葉ではない>
食べさせていただく → 食べせていただく
“させて”が正しい場合は、“さ”を抜くことで、
文章が成立しなくなるか、意味が変わってしまうので、一目瞭然ですね。
まとめ
今回は、「さ入れ言葉」について見てきましたが、いかがでしたか?
無意識に、“さ”が入れたこともあるかもしれませんね。
誤用なので注意していきましょう。
参考文献:
広辞苑第6版、明鏡国語辞典、
できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方